腹黒王子と秘密の契約
クレアはリリーのルームメイトで、同じ学園に通う同級生でもある。

肩につかない程のダークブロンドの髪は、お風呂に入った後なのかまだ少し濡れていた。
ボリュームのあるまつ毛に縁取られている翡翠のように綺麗な緑色の瞳は、部屋の中を歩きながら話すリリーを追っている。

「前にお店に花束を持ってくるお客さんの話ってしたじゃない?」

「ああ、貿易会社の御曹司くんのことね」

「うん」

「でも、あの人はアランが追っ払ってくれたんでしょう?
わたしも知ってるもの。
いろんな女の人とデートしてるんだって。
そこまでかっこよくないのにね、やっぱりお金持ってるからかしら」

「…アランもそんなこと言ってたんだけど、あのお客さんてほんとにそういう人なの?」

「え?リリー知らなかったの?」

クレアは有名な話だよ、と説明した。

複数の女の子と関係を持っているらしいということを聞いて、リリーは唖然とする。

その手の話に疎いリリーも、どうやら本当にアランに助けられたのかもしれないと、やっと思い始めていた。
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