腹黒王子と秘密の契約
貧乏学生の受難
ノルディア王国の王都の少し外れにある、小さなレストラン『キッチン ヘレン』。

小ぢんまりとした可愛らしいその店で、リリーは主に学校が終わってからの夕方、週の半分ほど働いている。

店主はリリーの両親と同年代の夫婦、マーカスとヘレン。

もちろん、店の名前はマーカスの愛する妻の名前からつけたものだ。

リリーがノルディア王国に留学生としてやってきたときから、もう二年半ほど。

店のメニューもひと通り作れるし、皿洗いでも接客でもなんでもする。

とにかく小さな店なので、従業員は仲良し夫婦とリリーだけの三人だ。

客も常連客ばかりの顔馴染み。

一生懸命よく働くリリーを、子供のいないマーカスとヘレンは自分達の子供のように可愛がっていた。

そしてリリーも、自分の生まれ育った国で同じような小さい飲食店を経営する両親と重ねてか、マーカスとヘレンを第二の両親のように慕っている。

「リリー。
今日はもうお客さんも来ないでしょう。
カウンターに夕食を用意してあるから、それが終わったら食べてね〜」
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