腹黒王子と秘密の契約
「は、はい…ありがとうございます」

人生でこんなに褒められたことのなかったリリーは、ただメイド達にされるがままの状態で固まっていた。

どんどんドレスアップしていく鏡の中の自分を、不思議な気持ちで見つめている。

最後に身につけるのも怖いような、宝石が散りばめられたイヤリングで耳元を飾ると、リリーはまじまじと鏡を覗き込む。

クレアの言った通りに、なんだか魔法をかけてもらったような気分だった。

「とっても素敵ですよ」

「…ありがとうございます」

今の自分なら、絵本の中のお姫様に少しでも近づけているだろうか。

心配なことはあるけれど、そんなことを思いながら、リリーはそっと鏡に触れる。

今夜だけ、この魔法がとけるまでは楽しんでもいいよね、と鏡に映る自分へと問いかけていた。





「リリー!すごい綺麗!」

リビングに戻ると、先に準備を終えていたクレアが数人のメイド達と待っていた。

リリーの姿を見たクレアは、驚きのあまり興奮気味に叫んでいる。

「変、じゃないかな…?
こんな素敵なドレス着たことないから…」

「大丈夫!お姫様みたいよ!
そのドレスもやっぱりリリーにとっても似合ってる!」
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