腹黒王子と秘密の契約
突然のことでクレアの隣に写ってしまったかもしれないと気にしつつ、リリーは慣れないヒールでカメラから逃げるように先へ進む。

なんといっても、クレアは王室が贔屓にするファッションブランドのデザイナーの孫であり、今人気急上昇中のモデルでもある。

今夜のクレアのドレス姿は、またたくさんの雑誌の紙面を飾るだろう。

「やっぱりクレアも有名人なんだよね。
あー、でもびっくりしちゃった!
フラッシュのせいで、まだ目がチカチカする」

「まぁ、お祖母様のドレスの宣伝もしっかりしないとね。
笑顔で写真に撮られるのも、仕事のうちみたいなものよ」

「なるほど」

「でもここからはカメラもないし、おもいっきり楽しまないと!」


玄関ホールの中で、リリーは内装の美しさにきょろきょろしきりで目を奪われていた。

想像ではもっと贅を尽くした派手な造りをイメージしていたけれど、城内は上品で洗練されたクラシカルな雰囲気が漂っている。

輝く大理石の床も、高い天井を飾るシャンデリアも、美しい彫刻が施されたアンティークの家具も、その全てにノルディア王家の長い歴史が感じられた。
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