腹黒王子と秘密の契約
「ねぇ、リリー。
クリフォード王子はどこにいらっしゃるのかしらね」

「え?」

「だって、ニコラス国王のお隣にいらっしゃるのはセリーナ王妃だけで、クリフォード王子はどこにもいらっしゃらないでしょう?」

「そういえばそうだね…」

シルヴィアと離れても緊張でそれどころではないリリーに対して、クレアは辺りをきょろきょろしながら不満そうにグラスを傾けている。

クレアの今夜のパーティーの目的は、クリフォード王子に一目でも会うことだ。

もし出席さえしていないとしたら、期待が外れたことになってしまう。

「去年は確かに出席されていたのに…」

そう言って、クレアはワインを一気に飲み干すとがっくりと肩を落とす。

「クレア…そんなに飲んで大丈夫?」

「あら、これくらい全然平気よ。
リリーはあまり飲んでないんじゃない?」

「クレアはお酒強いもんね。
わたしは緊張しちゃって…それに飲み過ぎて去年みたいなことになったら大変だもん」

お城で酔い潰れてしまうなんてことには絶対にならないようにと、リリーはせっかくのワインをまだほとんど口にしていなかった。
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