腹黒王子と秘密の契約
『お前、なんで…』

ギルト王国でしか使われていない言語を話す青年は、同じ言葉で話しかけられたことに驚いたのか、今度こそリリーをその美しい紫の瞳に映した。

『わたし、語学の勉強をしているんです。
ギルト語も少しなら話せます』

『それでか…でも、かなり流暢に話せてる』

『ほんとですか?
だったら嬉しいです。その国の方に通じると自信になりますね』

さっきまで見向きもしていなかったのに、親近感が湧いて興味を持ったのか、青年はリリーをじっと見つめている。

『さっきから、ずっとひとりみたいだけど?』

『あ…実は、こういうパーティーってはじめてで、どうしたらいいのかわからないというか…』

『パーティーがはじめて?』

リリーの話すことが信じられないのか、青年は眉を寄せて訝しんでいる。

『はい。今夜も、わたしは友人に連れて来てもらっただけで…
本来なら、こんなお城で開かれるパーティーに出席できるような立場じゃないですし』

『じゃあ…その、友人はどうした?』

『今は、ちょっと大事なお話中みたいで…』

次々に質問されて、リリーもそれに答える。
< 52 / 141 >

この作品をシェア

pagetop