腹黒王子と秘密の契約
酔って饒舌になった楽しそうなリリーの将来の夢の話を聞きながら、青年もときおり笑顔を見せている。

『なんだか、わたしばかり話してますね…
うるさくないですか?』

『いや、あんたみたいな女ってはじめてで、かなり新鮮だ』

『え?いたって平凡ですよ、わたしは。
むしろ今夜ここにいる女性達のほうが、綺麗で素敵な方がたくさんいると思います』

『素敵な女性ね…ただ外見を飾り立ててるだけにしか見えないけど。
俺にはあんたの話のほうが興味深い』

退屈な話を聞かせてしまったかと思ったけれど、どうやら楽しんでもらえたらしい。

『ふふふ』

『…なに笑ってるんだ?』

『いえ、お城のパーティーなんてやっぱり自分には場違い過ぎて、ずっと緊張で固まってたんですけど…今やっと普通に話せてるなぁ、と思って』

『それはよかったな』

嬉しそうに笑うリリーを見て、青年も目を細めて顔をほころばせる。

紫の瞳が目を引く端正な顔は、表情がないと少し冷たく感じられるけれど、やはり笑うと少年のようなあどけなさがあった。
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