腹黒王子と秘密の契約

「すごい…！素敵なお庭…」

開け放たれていた扉に手をついて、そっと外の様子を窺ったリリーは、そこに広がる光景に目を輝かせた。

「お城の中にこんな庭園があるなんて…」

四方を壁で囲まれているその場所には、夜露に濡れた薔薇が花びらをキラキラ輝かせて咲き乱れている。

言葉にできないほどの美しさに、リリーは誘い込まれるように足を踏み入れていた。

空に浮かぶ月の光が、囲われたこの空間をまるでスポットライトのように照らしている。

アーチをくぐり抜けて奥に進むと繊細な彫刻で飾られた噴水があり、そこから清らかな水が絶えず湧き出ていた。

「ほんとにキレイ…
ちょっとここで休憩させてもらってもいいかな」

噴水の横には、ちょうど可愛らしい白いベンチがある。

リリーは腰かけると、今まで履いたこともなかった高いヒール靴をすぐに脱ぎ捨て、足を解放する。

少し赤くなってしまっている足は痺れるような痛みを感じるけれど、冷たい外気に触れるとそれも少し和らいだ。

「はー…気持ちいい…
やっぱり慣れてないとこうなるよね。
よくみんなこんなの履いて歩けるなぁ」