腹黒王子と秘密の契約
体重をかけながらリリーの隣へ手をつくと、そのまま顔を覗き込むように距離を縮めてくる。

「えっ…あの…」

突然間近に迫るクリフォードの行動に、リリーは驚き顔を真っ赤にしてのけぞった。

襟元のタイが緩められたタキシード姿から感じる色気に、リリーの鼓動は壊れそうなほど騒いでいる。

「君は何者だ?
あの庭で何をしていた?」

探るような視線で射抜かれて、リリーは思わず後ずさる。

後ろへずりずりと後退しながら、それでも綺麗な深い碧色の瞳から目が離せない。

「す、すみませんでしたっ…
風に当たりたくて、足も痛くて…
でも迷ってしまって…それでっ」

「あ、おい」

「え?…きゃあっ!」

寝起きの働かない頭でいまだに状況が飲み込めないまま、リリーは密かに憧れていた人との近過ぎる距離にパニックを起こしていた。

いくらリリーの家のものとは比べ物にならない大きさのベッドでも、端まできているのにさらに後ろへ逃げようとすれば、どうなるのかは想像できる。

リリーはベッドから勢いよく転げ落ちた。
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