腹黒王子と秘密の契約
「イタ…」

後頭部を打ちつけてしまったリリーは、涙目になりながら体制を整えて起き上がる。

「大丈夫か?」

クリフォードはリリーの前に片膝をついて屈み込むと、心配そうに声を掛けた。

いつのまにかまたすぐそばにいるその存在に、リリーの心臓は休まる時がない。

「だ、大丈夫ですっ」

恥ずかしさで顔を上げられないリリーの気も知らず、クリフォードはリリーを軽く引き寄せると、柔らかい栗色の髪に手を潜らせて後頭部を確認している。

「コブになるんじゃないか?
凄い音がしたけど」

「いえ、丈夫にできてるので…全然平気です…」

「そんなわけないだろ。
悪い、そんなに驚くとは思わなかった」

ほんの少し触れられただけで真っ赤に固まるリリーの様子に、クリフォードは少しの間何かを考えていたけれど、堪えきれないといった様子で肩を揺らし笑っている。

いきなり笑い出したクリフォードをリリーは不思議そうに見上げ、その屈託のない笑顔に胸をときめかせる。


「…あの」

「あぁ、悪い…
青くなったり赤くなったり、表情がコロコロ変わるんだな、と思ったんだ。
どうやら、俺の思い過ごしだったらしい」
< 64 / 141 >

この作品をシェア

pagetop