腹黒王子と秘密の契約
「思い過ごし、ですか…?」

「パーティーの騒ぎに乗じて、城内で何かを企む者が現れる可能性もある。
セキュリティは万全だが、君のような可愛らしい女性には油断があったのかもしれない」

「そ、そんな!
わたしは本当に迷ってしまっただけでっ…
勝手に歩き回ってしまい、すみませんでした!」

恐ろしい誤解をされてしまっていることに驚き、リリーは慌てて弁解する。

「わかってる、落ち着いて。
幸い、君をあの庭で見つけたのは俺だけだ。
このまま誰にも見つからなければ問題ない」

「え…?」

安心させようとしてくれているのか、クリフォードは優しくリリーに手を差し伸べた。

その大きな手に、そっとリリーも手を重ねると、思いのほか力強く引き上げてくれる。

「もう疑ったりしていないよ。
まぁ、あんなにあどけない寝顔で眠る女性が、危険な人間であるとも思い難いな」

「寝顔って…」

「言っただろ?
君を見つけて、ここへ運んだのは俺なんだ。
抱き上げても、俺の腕の中でぐっすり眠っていたよ」
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