腹黒王子と秘密の契約
「そ、それは…重いのに、すみませんでした…」

「いや、平気だよ。
そんなに柔じゃないから安心して」

俯きながら話すリリーの声は、恥ずかしさのあまり消えそうなほど小さい。

リリーのそんな反応を楽しむように、クリフォードはまたも栗色の髪に優しく触れた。

それだけでビクッと敏感に身を震わせるリリーは、頬を赤く染めながら困惑の表情を浮かべている。

「そんなに怯えなくても、なにもしないよ。
髪が乱れてたから直しただけだ」

「あ…ありがとうございます」

なぜか楽しそうなクリフォードを直視できず、リリーは寝ぐせのついた髪を気にしながら視線をさまよわせた。

今、目の前にいるのがあのクリフォード王子だなんて、まだ信じられない。

一目でも会えたらとは思っていたけれど、まさかこんなことになるとは、リリーの想像をはるかに超えている。

「もう遅いが、さすがに泊めることはできないんだ。
朝になると、いろいろ面倒だしね。
今なら誰にも見つからずに城から出られる」

「ご迷惑をおかけして、本当にすみません…
あの…今はいったい何時なのでしょうか…」
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