腹黒王子と秘密の契約
パーティー中に持っていたはずのバッグも見当たらないことに気がついて、リリーは慌てながら辺りを探してみる。

その様子を見ていたクリフォードは、シルバーのクラッチバッグを差し出しながら尋ねた。

「お探しのものはこれ?」

「あっ、はい!
よかった…ありがとうございます」

「せっかく持ち歩いているのに、それに携帯電話は入れないのか?」

「えっと、それもそうなんですが…こんな小さなバッグ、本来は何を入れるものなんですかね。
携帯電話を入れたら、もうほとんど何も入らないですし」

リリーは手のひらサイズのそれを、心底不思議そうに見つめている。

その姿がまたおもしろかったのか、クリフォードは「クックッ」と喉の奥で笑っていて楽しそうだ。

「確かに、実用的な大きさじゃないかもな。
これからすぐ車を用意するから、それに乗って帰るといい。
それと…」

クリフォードはリリーの手を取ると、ソファーに座るように促した。

そして素直に腰かけたリリーの前に跪くと、素足のままの小さいかかとを軽く持ち上げて靴を履かせてくれる。
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