腹黒王子と秘密の契約
「か、看板娘って…
でも、少しでもお役に立てているならよかったです」

リリーはまた顔を赤くしながら、恥ずかしそうに少し小声で呟いた。

「役に立ってるなんてもんじゃないよ。
リリーといるとヘレンも私もとても楽しいんだ」

「そうよ〜。
私達って子供がいないでしょう?
だからリリーといると、娘がいたらこんな感じなのかしら〜って嬉しくなるの。
リリーの親御さんには、母親気分を味わわせてもらえてお礼を言いたいくらいなんだから〜」

「マーカスさん…ヘレンさん…」

二人の言葉を聞いて、リリーはこの国にやって来たばかりの心細かった気持ちを思い出し、なんだか感動してしまう。

しかし、これから暗くなるのも早くなる季節だというのに、これでは毎回送ってもらうことになりかねない。

気持ちは嬉しいのだけれど、どうしたものかと考えていた時だった。





「あ、やっぱりまだいたのか。
リリー。もう終わりだろ?」

カランコロンと店のドアベルを鳴らしながら入口から顔を覗かせた人物は、リリーを見つけるとそう言いながら店内に入ってくる。
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