腹黒王子と秘密の契約
クレアは着替えもせずドレス姿のまま、今まで必死に探し回ってくれていたらしい。

「でも、本当によかった…
わたしもリリーをひとりにしたまま、なかなか戻らなくてごめんね」

「ううん、勝手にいなくなったわたしが悪かったの」

お互いにやっと落ち着いてきたところで、リリーはクレアの背後に視線を向けた。

そこには黒のタキシード姿のアランが、心の底から安堵したような表情をして立っている。

「アラン、どうして…」

「………」

声を掛けたリリーと目が合うと、アランの表情は一瞬で険しくなった。
怒っているのは明らかだ。

その変化にリリーが身構えると、アランとの間に入るようにして、クレアがこの状況の説明をし始めた。

「リリーをパーティー会場で探している時にね、偶然会ったのよ。
わたしも驚いたんだけど、アランも出席していたみたい。
それからずっと、一緒に探してくれていたのよ」

「そうだったんだ…」

アランもパーティーに出席していたことに少し驚いたけれど、今はクレアと同じように心配をかけてしまったことを謝らなければ。

いつにもまして機嫌の悪そうなアランに、リリーはおずおずと話しかけた。
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