腹黒王子と秘密の契約
「アラン、あの」

「今まで何してたんだ」

リリーの言葉を遮るように、アランの怒りを含んだ声が真夜中の静まり返った廊下に響く。

「…ごめんなさい、実は…」

どう話せばいいのかと考えていると、リリーの肩に背後からそっと誰かの手が置かれた。

それと同時に、クレアとアランの瞳が驚きで見開かれる。

二人の視線の先はリリーではなく、その後ろに立つ人物へと向けられていた。

リリーも振り向くと、そこには今まで少し離れたところから傍観していたクリフォードが立っていた。

「城内で迷ってしまったみたいでね、体調も優れないようだったから、休んでもらっていたんだ」

クリフォードはリリーが話すよりも先に、クレアとアランにそう説明する。

しかし事実とはほんの少し違うような気がする。
リリーがクリフォードの真意を窺うように見上げると、碧い瞳もリリーを見つめ返した。

「そうだよね?」

「え?…は、はいっ」

確かにクリフォード王子のベッドで寝ていたとは言えないし、王子としての立場的にも何か問題があるのかもしれない。

優しい笑顔の中に有無を言わせぬような何かを感じて、リリーは慌てて頷いていた。
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