腹黒王子と秘密の契約
「えっと…アラン?」

この距離で聞こえないはずはないのだから、やはり怒っているのだろう。

今までも色々と迷惑をかけてきたけれど、今回のことでとうとう愛想をつかされてしまったのかもしれない。

もう話もしてもらえないのかと、リリーの顔が悲しげに曇る。

「ちょっと、アラン!
そんなに怒ることないでしょう!?
リリーも謝ってるじゃない!」

ずっと黙って様子を見守っていたクレアが、リリーを挟んで座るアランに向かって身を乗り出した。

少し強引にアランの着ているタキシードの袖口を引っ張り、話を聞こうとしないその態度を責め立てる。

「クレア!いいよ、大丈夫だからっ」

「別に怒ってない…」

「…え?」

いまだに顔は背けられたままだけれど、アランは落ち着いた声でしっかりと呟いた。

その言葉を聞いたリリーとクレアは、同時に間の抜けた声を出す。

「アラン、怒ってるんじゃないの?」

去年同様、もしくはそれ以上のお説教を覚悟していたリリーは首を傾げている。

その問いかけで、アランはようやくゆっくりとリリーの方へと向き直った。

「だからもう怒ってないって…
なんでそうなるんだよ」
< 77 / 141 >

この作品をシェア

pagetop