腹黒王子と秘密の契約
「アラン!どうしたの?」

「どうしたの、じゃねーよ。
この店通り道だろーが。帰りにただ寄ってみただけだろ」

突然現れたアランにリリーが目を丸くして驚くと、眉をひそめた仏頂面にあいかわらずの素っ気ない言葉が返ってくる。

「アラン君、こんばんは〜。
ご飯はもう食べたの?」

「あ、こんばんは。
飯は食ってきたので、大丈夫です」

ヘレンに尋ねられて、アランは丁寧に断る。

カウンターの中にいたマーカスにも、しっかり頭を下げて挨拶していた。

いつも無愛想で少々口の悪いアランも、実はなかなかの良家の子息で、礼儀正しい一面も持ち合わせている。

リリーと学部は違うけれど、同じ学園に通っている成績優秀な学生だ。

ミステリアスな黒髪と黒い瞳が印象的で、細身の長身と整った顔立ちのアランには、女子生徒の中にファンクラブまで存在する。

どの女子生徒に対しても冷たい態度でニコリとも笑わない。

リリーには不思議でよくわからないけれど、そんなクールなところが素敵だと騒がれていた。
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