腹黒王子と秘密の契約
「もしかして…アランがさっきから目も合わせようとしないのって…」

「………」

その理由が思い当たるのか、クレアは急に楽しそうに、なんだか意地の悪い顔でアランの顔を覗き込もうとする。

アランは何も言わないけれど、心なしか耳が赤くなっていた。

「リリーが綺麗すぎて直視できないんでしょう?」

「え?わたし?」

あまりにも唐突な話に、リリーは驚いて目を丸くする。

クレアの家のメイド達の手によって、確かに最大限まで綺麗にしてもらったけれど、人気モデルのクレアの隣に並ぶことさえ本当は恥ずかしい。

しかも今は寝起きでセットした髪も崩れているし、寝ぐせ付きだ。

その可能性はないと否定しようとしたけれど、アランは今まで見たこともないような赤い顔を手で覆うように隠していた。

「アランたら意外に純情なのね。
でも気持ちはわかるわ。
今夜のリリーはいつもより大人っぽいし、とびっきり綺麗だもの」

「うるさい…」

照れ隠しなのか、アランの声は少し怒っているようでいつもより低い。

それでも耳はさらに真っ赤に染まっていて、それがおかしくて、リリーもついに堪えきれず声を出して笑ってしまった。
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