腹黒王子と秘密の契約
「おい…リリー…
お前もなに笑ってるんだよ!」

「ふふっ。ごめんね。
でもアラン、耳まで真っ赤なんだもん。
それがおかしくて、つい」

クレアと一緒になっていつまでも笑っているリリーに、はじめは文句を言っていたアランも次第に表情が柔らかくなっていた。

隣で楽しそうに笑うリリーを、優しい瞳で見つめている。

父親に付き合わされて半ば無理矢理に出席したパーティーで偶然クレアと会い、リリーがいなくなったと聞かされたときは驚いた。

あまりにもどこを探してもいないので、嫌な予感までよぎり、生きた心地がしなかった。

最後の望みで城へと戻り、見つけた時は心底ほっとしてそこまで気が回らなかったけれど、気持ちが落ち着いてからはあまりにも普段と違う雰囲気に戸惑っている。

クレアの指摘通り、はじめて見たリリーのドレス姿は想像以上に綺麗だった。

普段シンプルなワンピースをよく着ているリリーの露出のあるドレス姿は少々目のやり場に困ったけれど、アランはそのときあることに気がついた。

「…おい。
耳、それ片っぽないけど、いいのか?」

「え?耳?片っぽって…」
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