腹黒王子と秘密の契約
アランに指摘されて、リリーは何気なく自分の耳に触れてみる。

「いや、反対。
左側だけイヤリングがない」

「えっ!?」

確認すると、確かに左側だけ何もついていない。

リリーは大慌てで、張りつくように窓に映る自分の姿を覗き込んだ。

「うそ…やだ!どうしよう!
いつ落としたのかなっ!?いつからないんだろうっ!?」

急に取り乱して騒ぎ出すリリーを、アランとクレアはなだめようとする。

「リリー、少し落ち着けって」

「そうよ。そんなに慌てないで…」

「だ、だって…あれは…」

イヤリングも、今リリーが身につけているものは全てクレアから借りているものだ。

着替えている最中も、宝石が散りばめられたイヤリングを見て、身につけるのも怖いと感じたことを思い出す。

いったいどれほど高価な物なのか、考えただけで気を失いそうだ。

「ごめんなさい!クレア!
どうしよう…今から探しに戻れないかな!?」

「お、お城にってこと?
いくらなんでも、それは無理よ」

「今何時だと思ってるんだ。
こんな夜中に城に入れてもらえるわけないだろ」
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