腹黒王子と秘密の契約
「それは、そうだけど…」

たとえパーティーが開かれていた後とはいえ、こんな真夜中に城を訪ねるなんて非常識もいいところだ。

わかってはいるけれど、居ても立っても居られずにリリーは必死に記憶を辿っていた。

「リリー、そんなに気にしないで?
全然平気だから!ね?」

「城のどこかに落としたなら、明日にでも遺失物届でも出せばいいんじゃないか?
運が良ければ見つかるかもしれない。
とにかく今夜は諦めるしかない」

二人の言葉もあまり頭に入ってこない。

思い当たるのはどう考えても、眠ってしまっていた時のことだった。

きっと、その間にはずれてしまったのだろう。

どうして今まで気づかなかったのか、と悔やまれる。

「クレア、ほんとにごめんなさい。
もし見つからなかったら、きっと弁償するから…」

「やだ、リリー…弁償なんて…
本当に大丈夫だから、そんなに落ち込まないで!」

「でも…ううん、やっぱり絶対に見つけるから!」

クレアは優しい言葉を掛けてくれるけれど、そういうわけにはいかない。

とにかく、明日になったらすぐに城へ事情を説明しに行かなければ、とリリーは決意を固めていた。
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