腹黒王子と秘密の契約
「今、リリーを送っていこうと思っていたところなんだ」

「あ、じゃあ終わるまで待ちます。
ついでなんで、俺が送ります」

「そうか、それなら安心だ。
リリーもよかったな」

アランの申し出にマーカスは満足そうに頷くと、リリーに向かってにっこり笑っている。

「あ、はい」

事の成り行きを黙って見ていたリリーは、素直に頷くとアランを見上げた。

「なんだよ」

「いえ、なんでもありません」

「なんで敬語なんだよ。早く食えよ」

その視線を訝しむように、アランが夕食の途中だったリリーを急かす。

「フフ、お茶でも飲んで待っててあげてね〜」

二人のやりとりを見ていたヘレンは、嬉しそうにリリーの隣の席にお茶を出してアランを座らせる。

なんだか優雅な所作でティーカップを傾けるアランを盗み見ながら、リリーは最後のパンの一欠片を口に放り込んだ。




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