腹黒王子と秘密の契約
『急いで準備する。
昨日もパーティー前の面談をすっぽかしたんだ。
さすがに二度目はマズいだろ』

『それは…国際問題になりかねませんね』

『はは…冗談にならないな』

『もちろん冗談などではありません。
わかっておられるとは思いますが、ユアン様の日々の行動全てが、ギルト王国の未来に多大に影響するということをお忘れなきようにお願い致します』

『………』

『口煩く思われるかもしれませんが…
微力ながら、私はこれからもユアン様を支えてまいります。
ですから__』

『わかっている。ヨハンの言う通りだ』

普段からひとりでふらっといなくなっては、周りを巻き込み大騒ぎになることも少なくない。

昨夜もクリフォード王子との面談を前に失踪し、ユアンの叔父にあたるカミルが護衛を引き連れ大捜索となっていた。

ユアンはヨハンの言葉に反抗することもなく、素直に頷き小さく微笑む。

しかし時折見せる、その全てを諦めたような力のない笑顔がヨハンをたまらなく不安にさせた。

『本当に、正論すぎて何も言えない。
…本当に、息がつまる』

『ユアン様…』
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