腹黒王子と秘密の契約
焼きたてのパンの香りがいっぱいに立ち込めたノルディア城のダイニングルームで、クリフォードは静かにナイフとフォークを動かしている。

十数人は座れる長いテーブルのいつもの席に着き、向かいの席で同じように食事をするユアンを観察する。

特に会話をしようとは思わないらしい。

ユアンはただ黙々と、目の前の朝食を口に運んでいるといった感じだった。

クリフォードも別に仲良くなるために誘ったわけではない。

ギルト王国の若き国王との交流は、今後のノルディア王国の国益を考えた時に重要になってくるはずである。

ユアンはまだ十六歳とかなり若く、国の政治にはほとんど関わっていないのが現状だ。

それでも長い将来を見据え、ノルディア王国とギルト王国の良好な関係を構築しておくことは必要であるとクリフォードは考えていた。

「ノルディアの朝食はお口に合いますか？」

「はい、とても美味しいです」

「それはよかった。
ノルディア城に滞在中、何か不自由があればおっしゃってください。
できる限りの対応をしますよ」

「ありがとうございます。
でも、とても快適に過ごせていますから」
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