腹黒王子と秘密の契約
リリーはその日、いつもより早く目を覚ますとすぐに起き上がり支度を始めていた。

クローゼットを開けて、中の洋服をひと通り確認する。

そんなに多くない洋服は、全てシンプルなデザインのワンピースばかりだ。

「お城に着ていくような服って、どんなのがいいんだろ…
でも、ちゃんとした服なんて持ってないもんね…」

リリーは少しの間迷っていたけれど、結局なかでもまずまず大人っぽく見える濃紺のワンピースに袖を通す。

化粧は普段からほとんどしないので、リップだけはきちんと塗った。

腰まである栗色の髪はハーフアップにして、ゴールドの大きめのバレッタで留める。

時計を見ると、時刻はまだ午前六時を過ぎたばかりだ。

もちろん今まで城を訪ねたことなどないけれど、こんな早朝に突然押しかけてもいいのだろうか。

もしかしたら追い返されるかもしれない。

それでもリリーはじっとしていられず、早々と支度を終えると部屋を出た。

リビングを通り過ぎ、玄関に向かう前にクレアの部屋の扉を見つめる。

昨日は自分のせいでかなり遅くなってしまったから、疲れ果ててきっとまだ夢の中だろう。
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