腹黒王子と秘密の契約
王都のほぼ中心地にある、小さな湖。

その湖畔に佇むノルディア城は、陽の光に照らされて煌めき、昨夜の姿とはまた違う美しさを放っていた。


「あの、ですから、昨日のパーティーに出席してたんです。わたしがです」


城門前には屈強なノルディア城の近衛兵が両脇にひとりずつ立っていて、リリーは必死で事の経緯を説明している。

「パーティーの時に身に付けていたイヤリングを落としてしまったみたいで…
きっと、お城のどこかにあるはずなんです!」

「ふぅ…お嬢さん、オレ達は今忙しいんだよ」

「本当なんです!本当に大切なもので…
どうしても見つけたいんです!」

「では、昨日のパーティーの招待状は?
どこの家のご令嬢かな?」

「え?それは…」

全く相手にしてくれない近衛兵は、リリーの身なりをジロジロと見て呆れたように言う。

昨夜のパーティーの出席者は、貴族や世界中の著名人ばかりだった。

リリーも昨夜のドレス姿ならまだよかったけれど、今の格好はあまりにも普通というか、平凡過ぎる。

信じてもらえないのも無理はないかもしれないけれど、どうしても引き下がることはできない。
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