好きになんてなるもんか!
突然のキス
さて!
ご飯炊いちゃわないとね。
「ふんふんふふーん♪」
私は無意識に、鼻歌を口ずさんでいた。
「希瑚…機嫌いいんだね。」
声を掛けてきたのは…
「奏!」
奏だった。
「オムライス…作るの手伝うよ。」
そう言って奏は冷蔵庫から、卵を7個出してボールに割り出した。
「ありがとう…。」
ーカシャカシャカシャ
キッチンには、奏が卵を溶く音が鳴り響いているだけだった。
ーカシャカシャカシャ
「…あのさ…希瑚…」
「なに?」
卵をときおわったから、焼く作業に移った時だった。
「希瑚は…どうして及川学院のプロデュース科を受験したの?」
奏が言った事にびっくりして、反応に遅れた。
「え…と…」
「どうして受験したの?
あんなにアイドル嫌いだったのに…。」
それは…、奏の言うとおりだった。
アイドルが嫌いなのに、どうしてそういう芸能に関わるような学校をわざわざ受験しないもんね…普通なら…。
「あの…ね…、ただ…自分がプロデュースしたアイドルがテレビに出て…お父さんの事を見返したかったんだぁ…。
でもね…、今は…違う。」
「違う?」
「うん…。今は…アイドル…好き…だよ?」
そう…私は…今、アイドルが、好き!
「…ん、そっか。」
二人で話していると、
「ご飯できたぁー?」
という声と共に蒼空と唯斗が顔を出してきた。
「あ、ちょうど出来たから持っていってもらってもいいかな?」
そういうと、二人は快く引き受けて一気に全員分のオムライスを持っていってきれた。
「ほら、奏早くしないとみんな待ってくれてるんだからさ。」
言いながら私が奏の方を振り向くと、
「希瑚…忘れてないよね?」
忘れる…ってなにを?
「やっぱり…忘れてるんだね。」
え?え?何のこっちゃ!
「希瑚…」
そう言って、奏は私の左腕を引っ張った。
「希瑚…」
え!なにこの状況。
私…奏に抱きしめられてる!
さらに、奏は私の顎を持ち自分の目線と合うように持ち上げた。
「…目…つぶって…。」
言われるがままに私が目を閉じると唇に何か柔らかくそして温かい何かが触れていた。
私は、それが奏のそれで、キスされていることを理解するのに時間はかからなかった。
奏は、唇を離すと静かに「ごめん」と言った。
「謝るくらいなら…キス…なんてしないでよ!なんで…キスなんてすんの!ありえないよ!」
それだけ言うと私はキッチンから出て行った。