好きになんてなるもんか!

~specialside:桃倉唯斗~

俺が始めて由宇さんを見たのは小学校四年の時だった。
母親がタレントだったこともあったから、俺は親の七光りでテレビにでていろんな芸能人に逢った。
けれど、どんなにたくさんの芸能人を見てもなんともおもわなかったんだ。
そんな時、あるバラエティー番組に出るのに、各芸能人の人に挨拶まわりをしていて由宇さんの楽屋に行ったとき一瞬だけ、時間が止まったように感じたんだ。
由宇さんの周りだけ、空気が違ったんだ。
今まで逢った芸能人なんかよりも…。


それから何日か経ったある日、母親が久しぶりに帰ってきた。
その時、由宇さんのことを話したら、笑ったんだ…母さんは笑ったんだよ…『ニッコリ』っていう笑いじゃなくて『ニヤリ』とした笑いだった。
「それじゃぁ…もし母さんが香山さんと付き合ってたら嬉しい?」
俺はよく意味がわかんなかったけれど「うん」と言って頷いたんだ…。

それから一年後俺は学校から帰ってきたら、玄関に母さんの靴と見たこともない男物の靴があったんだ。
疑問に思いながらリビングに行くと…
由宇さんがいたんだ。

「母さん達はね、結婚するのよ」

そう言って母さんは『嬉しい?』と聞かんばかりにニヤリと笑ってみせたんだ。





それから、俺が六年生になったばかりの日にリビングから由宇さんの怒鳴り声が聞こえてきたんだ。

「もう、いいだろ!
 これ以上俺の家族を…恵と希湖を苦しめないでくれ!?」 

家族……?
恵と希湖……?
って誰何だ?

まさか…母さん…そのことを知っていたからそれを弱味として脅してむりやり?!

俺がそう思った理由は一つだけだった。
ーーもともと母さんは男グセが悪いから芸能界でも、有名なタレントだったんだ。

でも、脅してまで気に入るような男なんていないと思っていた。


それから、由宇さんと母さんは一週間もしないで、離婚した。





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