おいてけぼりティーンネイジャー
部屋中の人達が、固唾を呑んで俺たちを見ている。
アリサは赤くなって、ますます強く自分の左胸を押さえた。
「苦しいの?大丈夫?」
俺はアリサの前にしゃがみ込んで、下から彼女を見上げた。
「……わからない。痛くはないけど。ドキドキが大きくて、怖い。」
「なんだ!アリサの心臓はちゃんと俺にときめいてるんだ。よかった!嫌われてるわけじゃなくて。」
自分でも調子がいいかなと思いつつ、俺は彼女にそう言った。
周囲からパラパラと拍手、そして軽いどよめきが起きた。
アリサはますます赤くなって、談話室から逃げ出した。
俺も慌てて追いかける。
「がんばれよ」
知らないおじさんに声をかけられて、気恥ずかしいけど、頭を下げた。
走れないアリサには、階段ですぐに追いついた。
「恥ずかしい想いをさせて、ごめん。」
俺がそう言って神妙に謝ると、アリサは口惜しそうに顔を歪めた。
「あなたって……」
「暎(はゆる)。」
「……暎くんは!かっこよくて、健康で、頭もよさそうで、幸せな家庭で育った幸せな人なんでしょうね。そんな人、私みたいないじけた人間には眩しすぎるの!」
アリサは真っ暗な誰もいない外来病棟でそう叫んだ。
いや、それは違うだろ。
「……そう見えるだけだよ。アリサだってそんなに綺麗なのに。話してみるまでこんなに……つらそうだとは思わなかったよ。」
少し言葉を選んでそう言った。
アリサは皮肉っぽく笑った。
「こんなに卑屈で、こんなに性格悪いと思わなかった?」
……バレてた。
確かに俺はそう思ったけど、言葉をすり替えた。
「自分でそんな風に自分を貶めちゃダメだよ。」
そう言ってはみたものの、言葉が上滑りしてる。
「偽善者。」
アリサはそう詰(なじ)った。
……ため息が勝手に出てきた。
仲良くなりたいのに、なんでこんな風に拒絶だけじゃなく攻撃を受けるんだろう。
俺は白旗を揚げた。
「……追いつめたみたいで、悪かったね。」
そう言い置いて帰ろうとした。
が、やはり気になって足を止めた。
振り向くと、アリサは泣きそうな顔をしてた。
……はあ。
これだから……女の子って、よくわからない。
俺は短い髪をかきむしって、待合用の椅子に座った。
「座れば?」
隣をポンポン叩いてアリサを呼んだ。
少しためらって、アリサは大人しく座った。
立ち居振る舞いも美しい。
見るからに、綺麗で頭のいい裕福なお家のお嬢さまだろうに。
「アリサには俺がよく見えるようだけど、そんなんじゃないよ。俺も、コンプレックスの塊だもん。」
……気付いたら、俺は、今まで他人に話したことのない愚痴をこぼしていた。
アリサは赤くなって、ますます強く自分の左胸を押さえた。
「苦しいの?大丈夫?」
俺はアリサの前にしゃがみ込んで、下から彼女を見上げた。
「……わからない。痛くはないけど。ドキドキが大きくて、怖い。」
「なんだ!アリサの心臓はちゃんと俺にときめいてるんだ。よかった!嫌われてるわけじゃなくて。」
自分でも調子がいいかなと思いつつ、俺は彼女にそう言った。
周囲からパラパラと拍手、そして軽いどよめきが起きた。
アリサはますます赤くなって、談話室から逃げ出した。
俺も慌てて追いかける。
「がんばれよ」
知らないおじさんに声をかけられて、気恥ずかしいけど、頭を下げた。
走れないアリサには、階段ですぐに追いついた。
「恥ずかしい想いをさせて、ごめん。」
俺がそう言って神妙に謝ると、アリサは口惜しそうに顔を歪めた。
「あなたって……」
「暎(はゆる)。」
「……暎くんは!かっこよくて、健康で、頭もよさそうで、幸せな家庭で育った幸せな人なんでしょうね。そんな人、私みたいないじけた人間には眩しすぎるの!」
アリサは真っ暗な誰もいない外来病棟でそう叫んだ。
いや、それは違うだろ。
「……そう見えるだけだよ。アリサだってそんなに綺麗なのに。話してみるまでこんなに……つらそうだとは思わなかったよ。」
少し言葉を選んでそう言った。
アリサは皮肉っぽく笑った。
「こんなに卑屈で、こんなに性格悪いと思わなかった?」
……バレてた。
確かに俺はそう思ったけど、言葉をすり替えた。
「自分でそんな風に自分を貶めちゃダメだよ。」
そう言ってはみたものの、言葉が上滑りしてる。
「偽善者。」
アリサはそう詰(なじ)った。
……ため息が勝手に出てきた。
仲良くなりたいのに、なんでこんな風に拒絶だけじゃなく攻撃を受けるんだろう。
俺は白旗を揚げた。
「……追いつめたみたいで、悪かったね。」
そう言い置いて帰ろうとした。
が、やはり気になって足を止めた。
振り向くと、アリサは泣きそうな顔をしてた。
……はあ。
これだから……女の子って、よくわからない。
俺は短い髪をかきむしって、待合用の椅子に座った。
「座れば?」
隣をポンポン叩いてアリサを呼んだ。
少しためらって、アリサは大人しく座った。
立ち居振る舞いも美しい。
見るからに、綺麗で頭のいい裕福なお家のお嬢さまだろうに。
「アリサには俺がよく見えるようだけど、そんなんじゃないよ。俺も、コンプレックスの塊だもん。」
……気付いたら、俺は、今まで他人に話したことのない愚痴をこぼしていた。