おいてけぼりティーンネイジャー
「GPSで知織がどこにいるか確認するの、俺の楽しみなのにぃ。」
……一昨年の夏休み、私が一週間も東京に滞在していたのに、最後の2日しか会えなかったことがよっぽど気に入らなかったらしい。
あの後すぐに、暎さんは私の居場所をGPSでチェックするようになった。
信頼されてないわけじゃなくて、こういう偏執的なヒトなんだろうとは思うけど。
「……行動監視して、わざわざキスマークまで付けるのに、手ぇ出さへんって……歪んではるわぁ。」
私がそう言うと、暎さんは赤くなった。
「なに?俺、ストーカー?」
「そうかも!」
見つめ合いながら笑った。
こんな時間を、ずっと待っていた。
やっとちゃんと恋愛が始められる。
私達は巡ってきた春に浮かれていた。
……まあ、外で一緒に行動できそうにないから、お花見もままならないけど。
「さて、と。お茶でも入れましょうか。」
「あ、イロイロあるから、使って。」
イロイロ?
お台所に行って、驚いた!
やかん!ポット!お鍋!
ティーポット!ティーカップ!
お湯飲み!お抹茶茶碗まで!
「すごい!これ、どしたん!?この部屋にお客さんでも来はるようになったんですか?」
「誰も来ないよ。清掃会社だけ。知織がココでくつろげるように揃えてみたんだけど、他に欲しいものあったら何でも言って。」
……うわ~……何か、感動した。
「ありがとう。泣けてきた。」
ギョッとしたらしく慌てて暎さんが飛んできた。
「なんで!?そんなにうれしいの!?こんなことで?」
「うれしい~~~。」
私は暎さんにしがみついて泣きじゃくった。
暎さんは、本当に私を待ってくれてた……。
これからも、ここに来ることを望んでくれている……。
私の居場所を作ってくれてる……。
それだけで胸がいっぱいになった。
「……欲しいもの、ありました。」
暎さんの派手なシャツにしがみついたまま、綺麗な顔を見上げた。
肩まで伸びた金色の髪がさらりと私の顔を撫でた。
「なに?」
「洗濯機と室内干し用の竿と除湿機。洗剤は純石けんと酸素系漂白剤。……クリーニングは今まで通り出してください。でも、下着と靴下を1度着用したら捨てるって仰ってたのが……ずっと気がかりで……」
「……いや、知織にさせるのは……」
「下着と靴下だけならそんな量もないし、たいした手間じゃないです。」
「でも、コンサートとか行くと、一日に何回も着替えてけっこうな量になるよ。」
「……そのけっこうな量を、ず~っと全部使い捨てしてはったんかと思うと、ぞっとします……」
私が苦虫を噛んだように顔をしかめると、暎さんは弾けるように笑い出した。
「敵わないな。ごめん。ありがとう。よろしく、です。」
……一昨年の夏休み、私が一週間も東京に滞在していたのに、最後の2日しか会えなかったことがよっぽど気に入らなかったらしい。
あの後すぐに、暎さんは私の居場所をGPSでチェックするようになった。
信頼されてないわけじゃなくて、こういう偏執的なヒトなんだろうとは思うけど。
「……行動監視して、わざわざキスマークまで付けるのに、手ぇ出さへんって……歪んではるわぁ。」
私がそう言うと、暎さんは赤くなった。
「なに?俺、ストーカー?」
「そうかも!」
見つめ合いながら笑った。
こんな時間を、ずっと待っていた。
やっとちゃんと恋愛が始められる。
私達は巡ってきた春に浮かれていた。
……まあ、外で一緒に行動できそうにないから、お花見もままならないけど。
「さて、と。お茶でも入れましょうか。」
「あ、イロイロあるから、使って。」
イロイロ?
お台所に行って、驚いた!
やかん!ポット!お鍋!
ティーポット!ティーカップ!
お湯飲み!お抹茶茶碗まで!
「すごい!これ、どしたん!?この部屋にお客さんでも来はるようになったんですか?」
「誰も来ないよ。清掃会社だけ。知織がココでくつろげるように揃えてみたんだけど、他に欲しいものあったら何でも言って。」
……うわ~……何か、感動した。
「ありがとう。泣けてきた。」
ギョッとしたらしく慌てて暎さんが飛んできた。
「なんで!?そんなにうれしいの!?こんなことで?」
「うれしい~~~。」
私は暎さんにしがみついて泣きじゃくった。
暎さんは、本当に私を待ってくれてた……。
これからも、ここに来ることを望んでくれている……。
私の居場所を作ってくれてる……。
それだけで胸がいっぱいになった。
「……欲しいもの、ありました。」
暎さんの派手なシャツにしがみついたまま、綺麗な顔を見上げた。
肩まで伸びた金色の髪がさらりと私の顔を撫でた。
「なに?」
「洗濯機と室内干し用の竿と除湿機。洗剤は純石けんと酸素系漂白剤。……クリーニングは今まで通り出してください。でも、下着と靴下を1度着用したら捨てるって仰ってたのが……ずっと気がかりで……」
「……いや、知織にさせるのは……」
「下着と靴下だけならそんな量もないし、たいした手間じゃないです。」
「でも、コンサートとか行くと、一日に何回も着替えてけっこうな量になるよ。」
「……そのけっこうな量を、ず~っと全部使い捨てしてはったんかと思うと、ぞっとします……」
私が苦虫を噛んだように顔をしかめると、暎さんは弾けるように笑い出した。
「敵わないな。ごめん。ありがとう。よろしく、です。」