おいてけぼりティーンネイジャー
「や~、裕子がいくら心配してても、さすがにGPSまでは必要ないだろうと思ってたんだけどね~、今日みたいなの見ちゃうと、確かに用心に越したことはないか、と思って。」

ふうん?
手にとって、しげしげと見つめた。
「これって、どなたが管理されてるんですか?24時間?スイッチ入ってるんですか?」

「え~と、ボタンを押したらセキュリティ会社に連絡が行くみたい。もちろん24時間ね。GPSは、PCや携帯からどこに居るかをチェックできるけど、知織ちゃんが拒否ってたらわからなくできるみたいよ?」
「……拒否ることもできるんですか……」

そう言いながらも、私は逆手に取ればアリバイを作れることに気づいた。
暎さんのお部屋に行く前に、図書館の前のコインロッカーに入れといたら……ずっと図書館で勉強してた、ってことになるんじゃない?

「わかりました。ありがとうございます。携帯しますね。……でも平原先生、そんなに私、危なっかしいんですかねえ?隙だらけ?」
興味津々の祖母に防犯ブザーを手渡して、真剣に聞いてみた。

平原先生は、ちょっと困った顔になった。
「ん~……すごくしっかりしてるんだろうなとは思うんだけど、一見、ふわ~っとして見えるのよね。癒やし系?外見もおとなしそうなお嬢様だし、口を開けばおっとりした京都弁でしょ?」

「京言葉、です。」

私の指摘に、平原先生は顔をしかめて見せてから、笑って言った。
「……めんどくさい子!……そういうところをバンバン前面に出して行けば、変な幻想をを抱かれないんじゃない?でも、外面(そとづら)いいから、なかなか本音も言わなさそうだし……今日みたいなお馬鹿な子は突っ走っちゃうと怖いから。」

私は、うーんと首をかしげた。
「怖い、ですか?」
「怖いわよ。あんなヒョロヒョロな子でも、男の力には敵わないから。何かあってからでは遅いのよ。」
怖いぐらい真面目な平原先生の迫力に負けた。

「……わかりました。気をつけます。ご心配かけて、すみません。それに、わざわざ、ありがとうございます。」
平原先生は、ふーとため息をついて、私の肩をポンッと叩いた。
「もっと甘えてくれていいのよ。親戚なんだから。」

親戚……。

「あ、そうだ。今月ちょこちょこ、インターハイで近畿に行くけど……一緒に来る?」
平原先生がそう聞いてくれた。

「……祇園祭に行きたいな。」
つい、ぽろっと本音がこぼれた。

「祇園祭!?」
祖母が反応した。

「おばあちゃんも、行きたいのん?一緒に行く?」
水を向けると、祖母の顔がぱああっと明るく輝いた。

「ほな、おじいちゃんも一緒に行こっか?」
祖父は興味なさそうだったけれど、私に誘われるのはうれしいらしく、恭しくうなずいた。
< 104 / 198 >

この作品をシェア

pagetop