おいてけぼりティーンネイジャー
「よーし。それじゃ、みんなで京都に行きましょう!……ところで、祇園祭っていつ?どんなお祭りなの?」
「7月1日から始まってますけど、メインは15日の宵々山、16日の宵山、17日の鉾巡幸ですかね~。」
「……まだ終業式終わってないじゃない!こらっ!……じゃ、必然的に土日だね。」

確か、この日、暎さんは奈良でコンサートだったはず。
うまくいけば、京都で会えるかも?

私は、思わぬ祇園祭デートのチャンス到来に、飛び上がりたいほど浮かれた。


<いくつか報告があります。電話待ってまーす。>

それだけ送ってから、持たされたGPS付防犯ブザーの取扱説明書を熟読した。
精度をネットで調べて、対策を考える。
圏外や充電切れ、検索拒否……どうすれば自然に誤魔化せるか。
やっぱりコインロッカーがいいかな。

日付が変わった頃、暎(はゆる)さんから電話がかかってきた。
「お疲れ様。いかがでしたか?」
『疲れたー。でも今夜も楽しかったよ。知織は?なんかあったの?』

えへへ、と、笑ってから順に話した。
「あのね、平原まゆ先生、私の母親のいとこなんだって。親戚やった。」

『えっ!!』
電話の向こうで暎さんが驚いている。
そりゃそうだろう。
私は今日のことをかいつまんで話した。

『……なんだよ、そいつ。あっぶないなあ。』
暎さんは、告白してきた男の子に対していつまでもぷりぷり怒っていた。

そこ!?

「そんな危なそうなヒトには見えへんかってんけどねえ。……まあ、そういうことで、GPS付防犯ブザーを平原先生から持たされちゃいました。」

暎さんが弾けたように笑い出した。
『さすがまゆ先輩!やること、半端ないわー!』
……何か、仲良しっぽいな。

『あー、想像したらおかしい!あのヒトの迫力で押し付けられたら、そりゃ断れないよな!』
「まっすぐなかたですね。」
『うん、昔っからそう。誰もあのヒトには逆らえない。正論のヒトだしね~。』

そうかも。

『まあ、だから自分に後ろ暗いことがある時は避けたい相手だけど。知織も気を付けなよ。……でも、俺と知織のこと知ったらあのヒトどんな顔するんだろう。』
暎さんはいつまでも笑ってた。

「せやし、GPSの問い合わせのページと暗証番号、あとでメールしますね。暎さん、知りたがってたしちょうどいいと思って。」
『へえ!俺も見られるんだ。便利だねえ。』

ねえ。

「それからもう1つ。来週の土日に京都に帰ります。祇園祭なので。暎さん、土曜が奈良ですよね?その後、京都で一緒に過ごせませんか?」

朝まで。

飲み込んだ言葉は当たり前のように、暎さんに届いていた。
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