おいてけぼりティーンネイジャー
『子供、ねえ。……一条氏、知織ちゃんと出会う前、高校生とも人妻とも……女優、モデル、アイドル……かなり幅広く付き合ってたみたいだから、年齢は関係ないやろなあ。知織ちゃんも、別に幼くもないと思うけど。』

「……よく、ご存知ですね。」
高校生とも付き合ってたと聞いて、涙がピタッと止まった。

『心配やったから、イロイロ調べたわ。でも、全部ちゃんと清算しはったやろ?せやし、安心してんけど。……それだけ真剣なんちゃうか?責任とる気満々で。』

責任?
真剣?

「そんなん、わからへんもん。ちゃんと言うてくれな、伝わらへんもん。」
私の言葉を聞いて、お兄さんがクスクス笑った。

『……知織ちゃん、自分で気づいてるか?前と違って、俺にけっこう甘えてるで?別人みたいや。……一条氏にどっぷり甘やかされてるんやろなあ、って感じ。思い出してごらん?絶対!ベタベタにかわいがられてるはず!』

お兄さんの言葉に導かれるように、私は、暎さんの慈愛に満ちた瞳や声を思い出した。
そして、ふるふると首を振った。
「甘やかしかたが、お父さんみたいで嫌なの~!年齢差のせい?」

『お父さん、って!……一条氏、かわいそう。たぶん知織ちゃんのことがかわいくてかわいくてしょうがないんだろうに。』
そう言ってから、お兄さんはちょっと私を脅した。
『でも知織ちゃん、勇気あるねえ。一条氏、地方行ってるねんろ?知織ちゃんと喧嘩してしもたら、気晴らしに羽根伸ばしてはるんちゃうか?もてはるで~。選り取り見取りやろ。』

「イケズ……。」
また涙が出てきた。

『……知織ちゃん、明日、学校何時まで?もう、授業ないんやろ?』
「うん?明日は、水泳大会。私は、出番ないからお昼には終わるけど。」
『ちょうどいいな。俺、これから観劇で、終演後はデートなんだわー。明日は何もないから、気晴らし、する?』
「わざわざ、東京来てくれはるんですか?」
『いや、今、日比谷。』

え!?

『せやしめっちゃいいタイミングで連絡くれてるねん。これもご縁やろ。』

ご縁……。

『ほな、開幕ベル鳴ってるし!明日迎えに行くわ。今夜はお気に入りの音楽聞いて、お気に入りの本を読んで、ご機嫌さんで寝とき。』
「はい!ありがとうございます!」

うわぁー!
明日、お兄さんと……デート!?

テンション上がってきた!
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