おいてけぼりティーンネイジャー
「知織ちゃん、写経して帰りよし。」
いきなりそう言われてちょっと驚いた。
今までそんなこと言われたことがないのに、急にまた……。
「私、字ぃ下手やし恥ずかしいんですけど……」
そう言うと、祖父はニコニコして言った。
「かまへんかまへん。誰かに見せるためにやるんちゃうねんから。心が落ち着きますえ。」
私が悩んでいることはそんなにもあからさまに出ているのだろうか。
お墓参りをしてから、両親には先に帰ってもらい、私は1人残った。
祖父に言われたらしく、先ほどの凜々しい僧侶が文机に一式をセットして運んできてくださった。
「ありがとうございます。わ!素敵!」
朱塗の文机は何だか可愛くて、本当にお姫さまのお道具のようだ。
よく見ると、硯も筆も文鎮も……いかにも女の子仕様の新品だった。
「これって、もしかして、私の為に作ってくださったものですか?」
恐る恐る聞いてみると、彼は静かに微笑んだ。
「御前(ごぜん)様がおひいさまのためにお作りになられたものの一つでございます。」
……低いイイ声でそう言われて、慌てた。
「ちょ!おひいさまは、やめてください!え~と……」
彼の名前を思い出せずちょっと困っていると祖父が来た。
「えいけいさん、もう仲良ぉなったんか。知織ちゃん、暎慶や。久しぶりやろ?」
……えいけいさん……ごめん、覚えてません。
「御前様。さすがに覚えてらっしゃいませんよ。私もおひいさまのご成長に驚いてますから。」
えいけいさんと呼ばれた青年僧が私に名刺をくれた……お坊さんでも名刺を持つのね……
名刺にはお寺の名前と、執事補 大村暎慶と書かれていた。
うぉ!暎(はゆる)さんと同じ字!珍しい!
てか、私と同じ名字ってことは、親戚?
見覚えがない……。
「そうか~。まあ、ずっと京都におらんかったからなぁ。この春からは寺の仕事をしてるから、知織ちゃん、いつでも訪ねておいでぇ。歳も近いから、悩み相談の相手にちょうどええで。」
悩み相談……。
……できひんよなあ、さすがに。
私は苦笑しながらもお礼を言った。
「ありがとうございます。よろしくお願いします。」
暎慶さんは、まっすぐ私の目を見て仰った。
「お待ちしております。もちろん、一切口外いたしません。御前様にも、崇彬(たかあき)さまにも、ね。」
……専属カウンセラーを付けてもらうぐらい、悩んでるように見えたのか……。
我ながら、恥ずかしい……。
いきなりそう言われてちょっと驚いた。
今までそんなこと言われたことがないのに、急にまた……。
「私、字ぃ下手やし恥ずかしいんですけど……」
そう言うと、祖父はニコニコして言った。
「かまへんかまへん。誰かに見せるためにやるんちゃうねんから。心が落ち着きますえ。」
私が悩んでいることはそんなにもあからさまに出ているのだろうか。
お墓参りをしてから、両親には先に帰ってもらい、私は1人残った。
祖父に言われたらしく、先ほどの凜々しい僧侶が文机に一式をセットして運んできてくださった。
「ありがとうございます。わ!素敵!」
朱塗の文机は何だか可愛くて、本当にお姫さまのお道具のようだ。
よく見ると、硯も筆も文鎮も……いかにも女の子仕様の新品だった。
「これって、もしかして、私の為に作ってくださったものですか?」
恐る恐る聞いてみると、彼は静かに微笑んだ。
「御前(ごぜん)様がおひいさまのためにお作りになられたものの一つでございます。」
……低いイイ声でそう言われて、慌てた。
「ちょ!おひいさまは、やめてください!え~と……」
彼の名前を思い出せずちょっと困っていると祖父が来た。
「えいけいさん、もう仲良ぉなったんか。知織ちゃん、暎慶や。久しぶりやろ?」
……えいけいさん……ごめん、覚えてません。
「御前様。さすがに覚えてらっしゃいませんよ。私もおひいさまのご成長に驚いてますから。」
えいけいさんと呼ばれた青年僧が私に名刺をくれた……お坊さんでも名刺を持つのね……
名刺にはお寺の名前と、執事補 大村暎慶と書かれていた。
うぉ!暎(はゆる)さんと同じ字!珍しい!
てか、私と同じ名字ってことは、親戚?
見覚えがない……。
「そうか~。まあ、ずっと京都におらんかったからなぁ。この春からは寺の仕事をしてるから、知織ちゃん、いつでも訪ねておいでぇ。歳も近いから、悩み相談の相手にちょうどええで。」
悩み相談……。
……できひんよなあ、さすがに。
私は苦笑しながらもお礼を言った。
「ありがとうございます。よろしくお願いします。」
暎慶さんは、まっすぐ私の目を見て仰った。
「お待ちしております。もちろん、一切口外いたしません。御前様にも、崇彬(たかあき)さまにも、ね。」
……専属カウンセラーを付けてもらうぐらい、悩んでるように見えたのか……。
我ながら、恥ずかしい……。