おいてけぼりティーンネイジャー
目が覚めて、まず、激しい頭痛におそわれた。
頭がガンガンする。

「起きた?はい、これ飲んで。いっぱい飲んで。」
そう言って、暎さんがピッチャーとグラスを持ってきて、お水をついでくれた。

「頭痛くない?」
「……死にそうに、痛い。」

私がそう言うと、暎さんは苦笑して、頭痛薬をくれた。
「じゃ、一緒にこれも飲んで。」

「ありがとう……」
私は、言われた通りにお薬を飲み、何杯もお水を飲み干した。

「……何時?」
「もうすぐ14時。延泊するからゆっくりしてたらいいよ。由未ちゃんにも連絡してお願いしといた。」
まだボーッとする頭で、私は状況を整理した。

「ここに、もう一泊するの?」
「うん。大事な話もあるし。酒臭い知織を実家に帰すわけにもいかないし。」
……そうね。

「じゃ、家に電話する。」
暎さんはギョッとしてたけど、私はおかまいなしに父の携帯に電話をした。

「もしもし?お父さん。由未ちゃんから連絡いった?」
『来た来た。ちゃんと自分で電話してこなあかんやろー、って怒ってましたえ。どしたん?』
「ごめんなさい。つい調子に乗って、ウイスキーをがぶ飲みしてしまって。お酒臭いらしいし、明日帰る。」
『……大丈夫ですか?迎えに行ったげますえ?どこでも。』
「ううん、もう大丈夫。でもね、お父さんと真面目な話がしたいねん。」

暎さんがギュッと私の手を握った。
心配せんでいいよ、と、私は微笑んで見せた。

『なんや?宗教論か?哲学か?』
「ううん、娘としてお父さんに相談。お母さんに内緒の相談。聞いてくれる?」
『……好きなヒトの話か?』
「うん。」
『わかった。いつでもええで。』
「ありがとう。ほな、明日はちゃんと帰るから。」
『待ってるわ。一緒に除夜の鐘つこうな。』
父の優しさに涙がこみ上げてきた。

「うん。じゃあ。」
『あ、知織。』
切ろうとしたら、父に呼び止められた。

「はい?」
『……もし赤ちゃんを授かったんやったら、お酒はもうやめときや。中絶もあかんで。あんじょういくように一緒に考えたげるしな。』

涙腺崩壊。
お父さん、おっきいわ……

「ありがとう。でもまだそういうことはないから、安心してな。」

電話を切ってから、暎さんに聞かれた。
「お父さん、なんて?」
「お母さんに内緒の恋の話、聞いてくれるって。もし妊娠してるならお酒は飲むな、中絶するな、って。」 

暎さんは天を仰いでため息をついた。

「いい人に育ててもろてんなあ。よかったなあ。……て、俺にはそんなこと言う権利もないかもやけど。」
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