おいてけぼりティーンネイジャー
1月の半ば。
俺は1人で京都の知織の実家を訪ねた。
……東京とは質の違う寒さとは聞いていたが……今までは、からっ風がない分、楽な気がしていた。
でも今回よくわかった。
足元から冷えるって、こういうことか!
玄関先で座り込む覚悟では来たけれど、確かにこれは……つらそうだ。

多少怯えつつ、玄関チャイムを押した。

しばらくすると、知織の育ての親の大村さんが出てきた。
「……ほんまに来はったんですね。しかも、本気で座りこむ気ですやろ?……迷惑なおひとさんや。」
ため息まじりにそう言う大村さんに黙礼して、玄関先に座ろうとしたら

「そんなとこ座ってられたらご近所にまた言われますから、入ってください。」
と、嫌そうに言われた。

ラッキー!
……てか、大晦日に来た時、近所のヒトに見られてたのか……気づかなかったな。
ま、とりあえず第一関門突破~。

はじめてお邪魔する知織の家は、料亭よりも品があって格式高そうな日本家屋だった。
外から見えてた庭は白い砂利を敷いた小さな箱庭のような雰囲気だったが、通された部屋の向こう側には、さらに大きな庭があった。
大きな池の周囲をぐるっと回れそうだ。
てか、左右の棟は池の上に張り出して建ててある。
すごいな~。

「夏場、気持ちよさそうですね。」
大村さんにそう言うと
「虫が多て、大変やけど。」
と、たぶん、あてこすられた。

「知織は、大村さんに似てますね。」
……ちょっとめんどくさいところが。

大村さんは予想外だったらしく、首をひねった。
「……あの子ぉは、裕子には似てる思うてますけど、うちにも似てますかぁ?……従妹の子ぉに当たるし、血ぃは遠いけど、生まれる前から一緒にいたら自然と似てくるんやろか。」

「え!もともと親戚なんですか!じゃ、似てるわけだ!」
間違いない!
知織のたまに見せるイケズなところは、大村さんと同じだ!
……そう思うと、逆に大村さんに対する親近感が強まった。

「知織のことは置いといて、一条さん、裕子に会いに来はったんちゃいますんか?」
そう言われて、俺は、慌てて正座して手をついた。
「裕子さんに会わせてください!謝りたいんです!」

大村さんは、ため息をついた。
「……ほんまに……のれんに腕押しっちゅうか、マイペースっちゅうか……通じんおひとですなぁ。」

「デリカシーがないのよ。自分に自信がありすぎて、他人の闇は見えない。変わってないわね、一条くん。」
辛辣なことを言いながら裕子が姿を現した。

「どうぞ。」
ご丁寧に、綺麗な生菓子とお抹茶を出してくれた。
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