おいてけぼりティーンネイジャー
仕方なく念入りなストレッチをして、俺はグランドに出た。
しばらくトラックとシューズの感触を確かめるように歩いてから、おもむろにジョグを始めた。
……アキレス腱付近に違和感を覚えることはなさそうだ。
ただ、煙草のせいですぐに息が上がって苦しくなった。
「だらしな~い!一条、今、プラトン、全く考えてなかったでしょ?」
まゆ先輩にそう言われて、うなずいた。
「そんな余裕なかったですね。そっか。昔はジョグの時はずっとプラトンでしたね。……とりあえず、禁煙しないと肺、きっついですわ。」
一応ジョグを続けながらそう言う。
……走りながらの会話ってのがまた苦しいんだよな。
「煙草やめたら?必要?」
「ただの習慣ですかね。まあ、走るなら、煙草やめるべきでしょうね。」
俺がそう言うと、まゆ先輩は表情を引き締めた。
「走りなさいよ。私、一条が走ってるとこ見るの好きだったわ。」
……かなわないな、このヒトには。
「そうですね。とりあえず曲作ったら、禁煙から始めましょうか。」
半年後、まゆ先輩はオリンピック代表選手に決定した。
そして番組は俺のナレーションを加えて、放映された。
番組では、今回のテーマソングだけじゃなく、他のIDEA(イデア)の曲も使ってもらえた。
……すると、曲も売れたが、俺も売れてしまった。
特に、まゆ先輩との仲を邪推され、週刊誌沙汰になったのは笑えた。
遠慮のない会話もさることながら、対照的な俺達がお似合いに見えたらしい。
男のくせに女みたいな俺と、美人なのに真っ黒でサバサバした男の子のようなまゆ先輩。
……大変な時なのに変に騒ぎたてられてしまい、申し訳なくて、俺はまゆ先輩に電話した。
『あっはっは!おもしろいよねー!なんかもう、出発前からえらい騒がれちゃって!楽しいから、この調子でメダルとってくるわ』
相変わらず豪快なまゆ先輩に、俺もまた救われた。
「短距離でメダルは厳しいでしょ?参加できただけでもすごいことなんですから、気負わず楽しんできてください。」
俺がそう言うと、まゆ先輩は真面目になった。
『一条、相変わらず、おぼっちゃんね。自分がトップをつかむ気概がなくてどうすんの。……私は、勝つわよ。あんたも!……やるからには、頂点目指しなさい。禁煙もね!』
電話しながらも煙草をくゆらしていた俺は、慌ててもみ消して背筋を伸ばした。
しばらくトラックとシューズの感触を確かめるように歩いてから、おもむろにジョグを始めた。
……アキレス腱付近に違和感を覚えることはなさそうだ。
ただ、煙草のせいですぐに息が上がって苦しくなった。
「だらしな~い!一条、今、プラトン、全く考えてなかったでしょ?」
まゆ先輩にそう言われて、うなずいた。
「そんな余裕なかったですね。そっか。昔はジョグの時はずっとプラトンでしたね。……とりあえず、禁煙しないと肺、きっついですわ。」
一応ジョグを続けながらそう言う。
……走りながらの会話ってのがまた苦しいんだよな。
「煙草やめたら?必要?」
「ただの習慣ですかね。まあ、走るなら、煙草やめるべきでしょうね。」
俺がそう言うと、まゆ先輩は表情を引き締めた。
「走りなさいよ。私、一条が走ってるとこ見るの好きだったわ。」
……かなわないな、このヒトには。
「そうですね。とりあえず曲作ったら、禁煙から始めましょうか。」
半年後、まゆ先輩はオリンピック代表選手に決定した。
そして番組は俺のナレーションを加えて、放映された。
番組では、今回のテーマソングだけじゃなく、他のIDEA(イデア)の曲も使ってもらえた。
……すると、曲も売れたが、俺も売れてしまった。
特に、まゆ先輩との仲を邪推され、週刊誌沙汰になったのは笑えた。
遠慮のない会話もさることながら、対照的な俺達がお似合いに見えたらしい。
男のくせに女みたいな俺と、美人なのに真っ黒でサバサバした男の子のようなまゆ先輩。
……大変な時なのに変に騒ぎたてられてしまい、申し訳なくて、俺はまゆ先輩に電話した。
『あっはっは!おもしろいよねー!なんかもう、出発前からえらい騒がれちゃって!楽しいから、この調子でメダルとってくるわ』
相変わらず豪快なまゆ先輩に、俺もまた救われた。
「短距離でメダルは厳しいでしょ?参加できただけでもすごいことなんですから、気負わず楽しんできてください。」
俺がそう言うと、まゆ先輩は真面目になった。
『一条、相変わらず、おぼっちゃんね。自分がトップをつかむ気概がなくてどうすんの。……私は、勝つわよ。あんたも!……やるからには、頂点目指しなさい。禁煙もね!』
電話しながらも煙草をくゆらしていた俺は、慌ててもみ消して背筋を伸ばした。