おいてけぼりティーンネイジャー
宣材写真で不自然に目を見開いて無理矢理な笑顔を見せてるアイドルのレナちゃんは、去年、仲のいいお笑い芸人主催の合コンで逢ったレイナだった。

……まずい。
合コンの後で、彼女の部屋に行っちまったぞ。

「一条さ~ん?もしかして既にお手つきですか~?」
マネージャーにそう聞かれて、俺は額を抑えた。

「……尾崎には内緒にしてくれる?」
「僕は言いませんけどね。レナちゃんに口止めしなきゃバレますよ。」

……あ~……めんどくさい。
「いや、いいわ。俺、逢いたくないもん。曲、書くけど、彼女との仕事は入れないでね。」

「わかりました。でも、今までよく無事でしたね。歌番組で何度か一緒になってますよ?……まあ、一条さん、話しかけるなオーラはんぱないですけどね。」
「……まあな。」

マネージャーとの話を適当に切り上げて、個室に籠もるとギターを弾きながらイロイロ考えた。
レイナって子のことは、覚えてる。
モデル体型の綺麗な子が積極的で、俺のほうがお持ち帰りされたんだよな。
こなれた接待のようなセックスの後、俺の曲でデビューしたいって言い出して……うざかったからそれっきり拒否ったような気がする。

歌番組で共演ということは、とりあえずデビューしたんだな。
あの子に歌……ねえ。
全く思い浮かばない。

俺はあきらめて、尾崎に話しに行った。
尾崎はバロックオーボエのリードを削っては、出来映えが気に入らないらしく、ウガーッ!と吠えていた。
……こいつは常に楽器をいじってるか、リードを削ってるか……よく飽きないものだ。

「なあ、レナちゃんって子の、どこが好き?」
「清純なところ?高原の白い花みたいに清らかだろ?守ってあげたいというか……」

……やっぱり別人かもしれない。
「あのさ~、レナちゃんは知らないけど、俺、レイナって子にお持ち帰りされたことあるんだ。写真見たら同一人物っぽいんだよね。ま、そういうわけだから、尾崎、後は頼むわ。」
俺は悪びれずにそう言ってみた。

尾崎はポカーンと口を開けて俺を見ていたけれど、やがて肩をがっくりと落としてため息をついた。
「わかった。でも歌は作ってあげろよ。」
え~~~~。

「俺、イメージよくないんだよな。尾崎、考えてよ。」

尾崎は苦笑した。
「さっき言った通りのイメージしかないんだよ、俺には。それじゃデビュー曲と変わらないよ。一条は、レナちゃんのまた違う面を知ってるんだろ?」

俺は、うーんと考えてから、うなずいた。
「わかった。却下されるかもしれないけど……ローラ・モンテスは、言い過ぎか……うーん……クリスティーン・キーラー……」

「……何だよ、それ!悪女、それも娼婦ばっかりかよ!」
尾崎は泣きそうな顔で去って行った。
< 43 / 198 >

この作品をシェア

pagetop