おいてけぼりティーンネイジャー
入学式で、新入生代表として壇上に上がると、保護者席の両親が涙ぐんでいるのが見えた。

全く緊張はしてなかったけれど、父と母の愛情が伝わってきて胸が熱くなった。
がんばらなきゃ。

この学校は、入ってしまえば大学までエスカレーター式に進めるけど……私は入学式早々決意した。
両親が誇れるように、私自身が胸を張って生きていけるように、ちゃんと勉強をしよう。

教室に入ると、何となく周辺の子達と話すようになった。
クラスの男子はまだ小学生っぽいというか……はっきり言って子供だった。
朝、職員室で会った竹原先輩とはえらい違いだ。
まあ、学年が違うので当たり前なのだが。


「大村さんは、誰が好きなん?」
数日たった放課後、何となく同じグループになった子達から急にそう聞かれて、私は返答に窮した。
……普通はココで芸能人、それもアイドルを答えるらしい。
でも私にはわからない世界だ。

「ごめん、よく知らなくて。みんなはどんな人が好き?」
慌ててバトンを回して、会話を続けてもらう。
そのまま話題が歌番組やドラマに移行すると、もうお手上げ。
全く話に寄れなくなってしまった。

「ねえ、図書室に行ってみたいんやけど……一緒に行かへん?」
ダメ元で誘ってみたけど、やっぱり反応が悪かった。
仕方なく私は1人で図書室を訪ねた。
……前途多難だわ。

彼女らは、このままどこかでお茶でもするのだろう。
自分を殺して同行して、微笑みを浮かべて話を聞いていればよかったのかもしれない。
でも、ほんの少し一緒にいて会話を聞いていただけでも、自分がそこに溶け込むことができないことはわかった。
どうせ浮いてしまって居心地はよくないだろう。
小学校の時もずっとこうだったので、私は諦めていた。

もっとちっちゃい頃、確か、幼稚園に入る前までは普通に家でテレビを見ていた。
しかし気づけばテレビの電源が落とされ、そのうちにテレビそのものも撤去されてしまった。

母は、勉強の邪魔、ピアノのお稽古の邪魔、低俗な番組で感性が鈍る……等々言っていたけれど……本当の理由はちょっと違う気がする。

一時、母が精神的に不安定になっていた。
たぶんその頃からテレビを見なくなったように記憶している。

……母の精神安定のためにテレビを撤去したのなら、ワガママは言えない。
幼心に私はそう理解して、我慢してきた。
< 50 / 198 >

この作品をシェア

pagetop