おいてけぼりティーンネイジャー
1学期の期末テストが終わった。
私自身は今回も真面目に取り組んだし、結果もきっちり残せた。
答案を返される時も、褒めてもらうかケアレスミスを注意される程度のこと。

でも由未ちゃんに対しては、どの先生もデリカシーなさすぎ!
いちいち優秀なお兄さんを引き合いに出して、ひどいっ!!
聞いてる私のほうが口惜しくて口惜しくて、涙がこみ上げてきて感情的になってしまった。
「見返そう!」
私は泣きじゃくりながら由未ちゃんの両手を取ってそう言った。

由未ちゃんは、ちっちゃい頃からお兄さんと比較されることは慣れっこらしくてあまり気にしてなかったらしいけれど、私のペースに乗せられたようだ。
私は、今まで1人でしていた図書室での予習を、2学期からは由未ちゃんにも勧めた。

由未ちゃんは、最初こそ戸惑っていたが、すぐにコツを飲み込んだ。
……竹原先輩だけじゃなくて、由未ちゃんも頭がいい!

でも、由未ちゃん自身はそうは思えないようだ。
何でこんなに劣等感いっぱいなんだろう。
容姿だって普通にかわいいのに。
自信が持てない?
なぜ?

……比較対象が常にお兄さんだから?
それとも……何かトラウマが?


私は由未ちゃんという子をもっと知りたくて、放課後や休日も一緒に過ごすようになった。
お互いの家にお泊まりもし合った。

必然的に、家族ぐるみの付き合いとなり……気がつけば、私は新たな火種を抱えていた。
お兄さんだ。

ずっと色んな女の子と仲良くしていた竹原先輩は、いつの頃からか、同じクラスの男のヒト2人とつるむようになった。
この2人もまた綺麗なお顔をしたモテ男だったため、3人は相乗効果で目立ちまくった。
お兄さんはまるでアイドルのように言い寄る女子をうまくなだめていたが、ファンクラブと化したお取り巻き陣にとって、妹の由未ちゃんはともかくその友達の私は気に入らなかったらしい。

……そもそも、お兄さんとは、由未ちゃんを知る前から顔見知りなんだけど……そういう歴史は考慮されず、まるで私がお兄さん目当てに由未ちゃんに近づいたかのように忌み嫌われた。

ほんっとに、女の集団ってめんどくさい!





「『饗宴』、読み直したわ。……深いわ。深すぎて、溺れそうになったわ。知織(しおり)ちゃん、よぉあんなん読んでるなあ。」

由未ちゃんのお兄さん、つまり竹原先輩が、高校の図書室で本を選んでいた私にそう話しかけてきたのは、秋11月末。

「そうですか?でもお兄さん、体現してるんじゃないですか?肉欲と魂への憧れ。……せやし、身につまされるんですね。」

何も考えずに思ったまんまそう言ってしまってから、しまった!と後悔した。
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