おいてけぼりティーンネイジャー
「……正直に告白します。私、お兄さんのことは、素敵だな、と憧れてました。昨日までの私なら、それもありかな、と考えたかもしれません。でも、さっき、好きな人ができたから、もう無理みたいです。」

「そっか。残念。惜しかったな。まあでも、片想いやろ?ふられたらいつでも、おいで。慰めてあげるし。」
もしかしたらさっきの彼よりもオトナ~な対応のお兄さんを頼もしく感じて、私はずいっと膝を詰めた。

「その前に、相談に乗ってもらっていいですか?私も由未ちゃんも、あまりにも男性に免疫がなくて。どうしたらいいのか、全くわからないんです。」

お兄さんは愉快そうに笑った。
「もちろん、いいよ。で、相手は?誰?」

ホッとした。
やっぱり、この人、素敵だな。
……冷静に考えたら、さっき女の子を泣かして帰らせたひどい男なんだけどね。

しばらくお蕎麦屋さんで話した後、スフレ屋さんに移動した。
ことのあらましを理解したお兄さんはこう言ってくれた。

「ほんなら、由未は行かんほうがいいな。ちゃんと知織(しおり)ちゃんとそのヒトとの会話は成立してるし、関係も構築し始めてるやん。」
そうなのかな?

「でも、このままでいいんでしょうか?年齢差もありそうやし、これからどんな風にすれば、もっと親しくなれるのか……正直、よくわからへんのです。」
私の弱音に、お兄さんはにっこり笑った。

「意地張ったり、変に策を弄せんと、とりあえずは好意を伝えてみぃ?もしそれで相手がドン引きするなら、また考えよ。」
「ドン引きされたら、それっきりになりませんか?挽回するチャンスってあるんでしょうか?」
「必死やな。ふふ。やっぱり、知織ちゃん、一途に突っ走りそうやな。いいよ、すごくいい。」

お兄さんはそう言って、私の頭を撫でた!
ひゃ~!

「ほな、俺らが、ちょっと離れたとこから様子見てるわ。彼の反応を見極めて、今後の対策はそれからにしよっか。」
私は無言でコクコクッと何度も首を縦に振って、お兄さんの手から逃れた。

……心臓に悪いって。

「知織ちゃんの使命は連絡先を聞くこと。これだけは、ドン引きされてもゲットしぃな。」
私は、生唾を飲み込んで神妙にうなずいた。

「どんな人やろう。めっちゃ楽しみ。」
由未ちゃんがそうこぼしたのを聞いて、私はどう言おうか考えて……ついつい頬が緩んでしまった。

うまく言えないけど……うーん……

「内から大きなエネルギーを発してるのに、現実っぽくない少年みたいな人……」

私の言葉は抽象的過ぎたらしく、由未ちゃんとお兄さんは微妙な表情で顔を見合わせていた。

……ちょっと呆れられちゃった……。
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