おいてけぼりティーンネイジャー
……親にどう言えば納得してもらえるのか……。

しばらく悩んでいると、由未ちゃんがおそるおそる聞いた。
『知織(しおり)ちゃん……一条さんと付き合うの?』

つきあう?

「どうかな?私は好きだって言った。」
つきあう、というのがどういうことなのか、わからない。
年の差、立場の差、遠距離……大変なことが多すぎて、つきあいかたが想像つかない。

『一条さんは?』
由未ちゃんに聞かれて、暎(はゆる)さんがどう言ってたかを思い出した。
「私と逢って懐かしい気がしたんやって。で、話してると、私の歳を忘れて対等でいられるんやって。」

『まあ、確かに知織ちゃんはしっかりしてはるけど……。』
しっかりしてるというよりは冷めてるのかもしれない。
暎さんの熱意がうらやましい気がした。

「今日ね、暎さん、ほんまは正午過ぎの新幹線で東京に戻る予定やってんて。でも、図書館出た後、博物館に行ったの。常設展を見に。」
『……ああ、あの?知織ちゃんの好きな南宋の仏像?居てはった?』
「ううん、今月はお休みやったみたい。夕方まで博物館でしゃべっててん。来月も来てくれはるねんて。」

ダメだ。
由未ちゃんに上手く伝えられない。
自分の気持ちはそのまま言えるけど、暎さんの言葉や気持ちは……私の言葉では陳腐に聞こえる。
難しいな。
みんな、コイバナってどんな風にしてるんだろう。

電話を切ってから、私は居間に電話の子機を返しに行った。
「お母さん、お盆に東京のおじいちゃんとおばあちゃんに逢いに行かへん?」

軽いジャブで反応を見る。
「お盆?新幹線こんでるわよ?」
「予約したらまだ間に合いますやろ。ええなあ。うちも久しぶりにお会いしたいなあ。家族で行こか?」
なぜか父が食いついた。

「じゃあ、あなた、知織を、連れてってくださる?私は、やめとくわ。」
母は、なんだかんだ言って、いつも実家に帰りたがらない。
祖父母が京都に来ると喜んでいるので、親子の仲は悪くないと思うのだが。

「おひいさん、うちと行きますか?」
父にそう聞かれて、私は心の中でピースサインをした。

「うん!お父さん、私、歌舞伎も見たい!」
「おひいさんの歳やったら、普通はディズニーランドとかゆーんやろに。」
「……ディズニーランドよりは、よみうりランドの聖地公園に行ってみたいな。」

そう言ってから、いつか暎さんと行けるかなぁとぼんやり考えてる自分に気づいて苦笑した。
< 79 / 198 >

この作品をシェア

pagetop