おいてけぼりティーンネイジャー
「俺、ロリコンじゃないけど、知織は自分のものにしたい。知織が、俺達IDEA(イデア)のために、そんな風に人目を気にしてくれてるのはわかってるけど、それでも、知織が欲しい。」
「……趣味悪いわ、暎さん。もっと綺麗な子もかわいい子も、芸能界にはいっぱいいてはって、よりどりみどりやろうに。」

それとも、既にそういう子達はいっぱい食べちゃってお腹いっぱい?

「身体だけならね。でもそんな付き合い、いくら重ねても、心は満たされないんだよ。」
そう言って、暎さんは私の目を覗き込んで、頭を撫でた。
「こうしてるだけで、俺がどれだけときめいてるか、わかる?」

……わかる。
わかるから……私も、夢を見てしまう。

「恋が……ディオティマの言うように、善きものが永遠に自分のものであることを望むことなら、俺は、本気で知織に恋してる。信じられる?」

暎さんの言葉に、私は目を伏せて、ごくわずかにうなずいた。

「もちろん、今一般的には精神論のように言われてる『プラトニック』が、ソクラテスやプラトンから離れてしまってることも、知織にはわかってるよね?」

暎さんにそう確認されて、私は頬が熱くなるのを感じた。
クスッと暎さんが笑った。

……子供扱いしないでほしい……って言いたくて、でも言えなかった。
言ってしまうことのほうが、子供っぽい気がして。
幾つになれば、オトナとして、女として扱ってもらえるんだろう。


江戸城の石垣を模した建物に入ったところで、私は暎さんの腕に自分の手を絡めてみた。
「お♪」
暎さんがうれしそうな声を挙げて、私の手に空いてるほうの自分の手を重ねてくれた。

それだけで、満たされる。
たったこれだけのことなのに、不思議。

「次、いつ逢えますか?」
「……うん、いつでもいいよ。このまま、知織にくっついて京都に行っちゃおうかな。」

え……。

「イベント終わったばっかりだもん。秋のツアーがの準備と~、曲作ったり、何度かメディア出演と取材がある程度。いつもは海外あちこち行ってるんだけどね~。」
そこまで言って、暎さんは私の目をのぞきこんだ。
「知織さえ都合がつくなら、連れて行きたい。日本じゃなけりゃ、気がねしないで一緒に歩けるんだろ?」

胸が……ドキドキする。
すごく、行きたい。
でも、無理だぁ。

「大学に入ったら、連れてってください。」
それまで続くかどうかわかんないけど。
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