おいてけぼりティーンネイジャー
「あ、ありがとう……」
思わずそう言ったけれど、母は淋しそうに言った。
「まさかこんなに早く巣立つとは思わなかったけどね……ちょうどいい機会だから、今まで言えなかった大事な話もさせて。お父さんね、生物学的には知織の父親じゃないの。」
え?
突然の言葉に、咀嚼できない。
ぽかーんとする私に、母はたたみかけるように言った。
「私が、高校中退して知織を産んだことは知ってるわね?当時お父さんは、我が家に下宿していて……お母さんが未婚の母になる決意をしたのを知って、自分が父親になるって申し出てくれたの。継ぐはずだったお寺を弟に譲って、世間の荒波から知織と私を守ってくれたの。」
未婚の母……え~と~……
「だから知織は、今まで以上に、お父さんに感謝して、お父さんを大事にしてあげてね。以上、私の話は終わり。」
母はそう言って立ち上がった。
いやいやいやいやいや!
大事なこと、言うてませんよ~!?
「あの、お父さんが本当のお父さんじゃないなら、……誰?」
母はふすまに手をかけたまま、振り返った。
「お父さんは、もともと私の従兄よ。知ってるでしょ?」
違う~!
「いや、そうじゃなくて!私の、遺伝子上の父親!……もしかして、妻子あるヒトとの道ならぬ恋やった?」
すごく大切なことなのに、ミーハー的な興味で聞いてる自分が、ちょっとおかしかった。
対照的なぐらい、母はつらそうな表情になった。
「……それは、意味のない質問だから。知織には産まれる前から、お父さんが父親なの。お父さんだけよ。」
ずいぶんとかたくなな母の態度に、私はますます不安になった。
「私の存在すら知らないの?……そのヒト。」
母の表情が蝋人形のようになった。
「……そうね。だから知織は気にしなくていいから。あなたは私の子。私とお父さんの子、だから。」
そう言い置いて、母はお座敷から出てった。
私は、そのまま、呆けていた。
大好きな父は、本当の父ではなかった。
すごく淋しいことなんだけど……今の話を聞く限り、ますます父に対する感謝と愛でいっぱいになる。
けど、それとは別の次元の問題なのよね。
本当の父親。
……生きているのだろうか……死んだのだろうか。
冷静に考えて、不倫の可能性が高い気がする。
高校生の母が1人で産む覚悟をするぐらい、相手のことが好きだった、ってことよね?
しばらくしてから、のろのろと座敷を出た。
廊下に心配そうな顔の父が座っていた。
父親じゃない、なんて……思えない。
私は父の首に腕を回して、しがみついた。
「お父さん……大好き……」
父は黙って、私の背中を撫でてくれていた。
思わずそう言ったけれど、母は淋しそうに言った。
「まさかこんなに早く巣立つとは思わなかったけどね……ちょうどいい機会だから、今まで言えなかった大事な話もさせて。お父さんね、生物学的には知織の父親じゃないの。」
え?
突然の言葉に、咀嚼できない。
ぽかーんとする私に、母はたたみかけるように言った。
「私が、高校中退して知織を産んだことは知ってるわね?当時お父さんは、我が家に下宿していて……お母さんが未婚の母になる決意をしたのを知って、自分が父親になるって申し出てくれたの。継ぐはずだったお寺を弟に譲って、世間の荒波から知織と私を守ってくれたの。」
未婚の母……え~と~……
「だから知織は、今まで以上に、お父さんに感謝して、お父さんを大事にしてあげてね。以上、私の話は終わり。」
母はそう言って立ち上がった。
いやいやいやいやいや!
大事なこと、言うてませんよ~!?
「あの、お父さんが本当のお父さんじゃないなら、……誰?」
母はふすまに手をかけたまま、振り返った。
「お父さんは、もともと私の従兄よ。知ってるでしょ?」
違う~!
「いや、そうじゃなくて!私の、遺伝子上の父親!……もしかして、妻子あるヒトとの道ならぬ恋やった?」
すごく大切なことなのに、ミーハー的な興味で聞いてる自分が、ちょっとおかしかった。
対照的なぐらい、母はつらそうな表情になった。
「……それは、意味のない質問だから。知織には産まれる前から、お父さんが父親なの。お父さんだけよ。」
ずいぶんとかたくなな母の態度に、私はますます不安になった。
「私の存在すら知らないの?……そのヒト。」
母の表情が蝋人形のようになった。
「……そうね。だから知織は気にしなくていいから。あなたは私の子。私とお父さんの子、だから。」
そう言い置いて、母はお座敷から出てった。
私は、そのまま、呆けていた。
大好きな父は、本当の父ではなかった。
すごく淋しいことなんだけど……今の話を聞く限り、ますます父に対する感謝と愛でいっぱいになる。
けど、それとは別の次元の問題なのよね。
本当の父親。
……生きているのだろうか……死んだのだろうか。
冷静に考えて、不倫の可能性が高い気がする。
高校生の母が1人で産む覚悟をするぐらい、相手のことが好きだった、ってことよね?
しばらくしてから、のろのろと座敷を出た。
廊下に心配そうな顔の父が座っていた。
父親じゃない、なんて……思えない。
私は父の首に腕を回して、しがみついた。
「お父さん……大好き……」
父は黙って、私の背中を撫でてくれていた。