双姫 Ⅰ
『ねぇ、『双覇』の下っ端くん~?』
「…俺の名前は疾風(はやて)です!」
どうやら
下っ端くんが気に入らなかったらしい。
『貴重な情報ありがとねぇ~?
因みに東条の居場所とか知らないよね?』
「いや…俺らの総長に
「関わんな」ってキツく言われてますから。」
『…そっかぁ~
他になんか情報とか無いよね?
些細な事でもなーんでも良いんだ!』
「情報…うーん………。」
必死に情報になる事を思い出しているのか
頭を抱え込む疾風。
なんだか申し訳ない(笑)
「情報になるか分かんないんですけど…。」
『良いよぉ~?言ってみて~~♪』
「東条は蛇好きで
首の辺りにタトゥーを入れてるって。
『蛇蝎』にも蛇が入ってますしね。」
『それだけじゃないねぇ~?
蠍(サソリ)も入ってる。
それで『蛇蝎』?
どこまで安直な名前で笑える。』
「安直…?」
『人が恐れ忌み嫌うもののたとえで
使われる言葉だよ~?
それに加えて蛇好き?
さぞ狡猾な男なんでしょーねぇ。
ふふ、疾風。情報ありがと♪
じゃあね~♪♪♪
これからは気を付けるんだよぉ~?』
私は疾風に笑顔を見せ、背を向ける。
路地裏を抜ける時、私から笑顔は消えていた。