双姫 Ⅰ
「なんで!なんでこんな事!!」
俺は許せなくて蒼翔さんの胸倉を掴む。
そのせいで顔を隠してたフードが取れ、
『朱』と『蒼』の瞳と目が合った。
「…ッ!?」
でも、それより蒼翔さんの表情に驚いた。
「なんっつー顔してんっすかッ…!?」
苦しそうで今にも崩れてしまいそうな。
見たこっちが悲しくなった。
蒼翔さんは『蛇蝎』を潰す為に
倉庫から出て行った。
「恨みがある」と言っていたけど、
蒼翔さんの
それは軽いものじゃないと分かった。
殺したい程、憎んでいるんだと。
でも…蒼翔さん。
それなら
どうして総長達の側に居たんですか?
どうしてあんなに
楽しそうだったんですか?
どうして皆を頼むなんて
俺に言ったんですか?
貴女にとって
『双覇』が大切だったからじゃないんですか?
倉庫から出て行った『双姫』の後ろ姿は
とてもとても小さく見えた。
疾風sideEND