双姫 Ⅰ


「だから、言わなかったろ?」


「賢明な判断だと思うよ。」


「お前、マヂ生意気!」


イテテ…と言いながら立ち上がり、
俺と向き合う藤先。


「朱音は弱い、喧嘩が強くても心が弱いんだ。

動揺させると俺でも隙を突く事が出来る。
現に教室でアイツの攻撃を避けただろう?
それにフードも外した。

普段の朱音ならこうはいかない。」


「そう言われれば…。」


「相手が俺だったからその程度で済むが、
東条だったらどうする?

確実に刺されてるだろうな。」


「なッ!!」


「朱音の過去は聞いただろ?
東条は人を傷付けて楽しむ奴なんだ。

躊躇なんかしてくんねぇーぞ。」


確かに聞いた事がある。
だから、玲は下っ端達に「関わるな」と言ってる。


「…東条と対峙すれば
朱音は憎しみに駆られるだろう。
冷静さを失い、迷わず奴を狙う。

それがどっちに転ぶかは誰にも分からない。
だから、お前がそれを止めろ。」


真っ直ぐ俺を見る『光龍』
どれだけ朱音を大切に想っているか分かる。


「あぁ、そのつもりだ。」


俺がアンタの分まで朱音を守る。


類sideEND


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