双姫 Ⅰ


『うぅ…お久し振りです。パソコンさん…(涙)』


私は今、苦手なパソコンと対峙している。
最後に使ったのは大学卒業試験の時だ。


「朱音…って泣いてる!?
そ、そこまでパソコン嫌いなのぉ!?」


『だっでぇ~!(泣)
もう触りたくないんだもん!!』


「どのみち母さんの会社継いだら
デスクワークの日々なんだぞ?

楽したいなら得意になれよ。」


「確か神崎財閥だったよな。
大丈夫か?会社潰れるんじゃね??(笑)」


『あ?今なんつった??』


「馬鹿!玲、お前余計な事をッ!!
「苦手」って言ってもそこらに居る奴より
出来るんだからな!?」


「…え?」


「朱音は「出来ない」「苦手」って言ってるが
気付いてねぇだけでそれなりに出来るんだ!」


『玲に馬鹿にされるなんて人生の汚点よ。
見てなさい、完璧にマスターしてやる!!』


カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ…



「スイッチ入ったな。
あぁなったら誰も止らんねぇぞ……。

終わったら…俺より出来るかもな……。」


パソコンを打ち続ける音は
聞いている俺達がノイローゼになりそうだ。


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