双姫 Ⅰ
『…やっと会えたな東条 魁!!』
標的を目の前にすると感情を抑えられない。
「あぁ?誰だテメェ…。」
一歩また一歩と東条に近付く。
『忘れたのか、この場所で何があったのか。』
「あー…昔ここでガキが死んだなぁ?
まぁ、俺が殺ったんじゃねぇし。
実に楽しかったぜぇ?」
『…楽しかった?』
「あぁ、今日も楽しめそうだ。」
『それはこっちの台詞だ。
俺はお前とケリ付ける為に来たんだから。』
「ケリだと?」
意味が分からないと言いたいようだ。
『この顔を忘れたとは言わせない。』
フードとウィッグを外す。
『お前がこの場所で私の妹を殺したんだ。』
ドス黒い何かが私を包む。
目の前の男しか目に映らなかった。